31期生の入学式。忘れたくないこと。

今日はいよいよ31期生170名の入学式。
姉妹校開校以来今日まで合同で入学式をしてきましたが、
今回から別々で行うことになり、
初めてこの会場、大阪市中央公会堂をお借りしました。
この建物がいかに由緒あるかは、
この後の私の式辞を見て下さい。

基本的に私は、式辞は書いて読みません。
思ったことをその時に私の言葉で伝える。
いわば、新入生や保護者に対するメッセージと位置づけています。
そう言えば、保護者の方も100名近い方々にお越し頂いていました。

そのメッセージを思い出しながらここに書いてみましょう。

日本分析化学専門学校第31期生にあたります
170名の新入生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。
日本分析化学専門学校を代表し、
皆さんの入学を許可するとともに心から歓迎の意を表します。 
また、ご父兄の皆さんにも心からお喜びを申し上げます。
合わせて、本日大変お忙しい中ご臨席をいただきました
ご来賓の皆様方には、高いところからではございますが、
衷心より厚く御礼申し上げる次第であります。

今日は学校創立以来初めて、この大阪市中央公会堂を利用しましたが、
大正7年ネオ・ルネッサンス様式を基調に建築され、
例えば、アルベルト・アインシュタインヘレン・ケラー
地球は青かった」で有名なガガーリンなど高名な人たちも
ここで講演したという歴史ある会場で入学式ができますことを
大変嬉しく思っています。

冒頭に少し余談ですが、昨年度は創立30年にして、
初めて卒業生のお子さんが入学を果たされましたが、
今回の入学には、昨年に引き続き二人目の卒業生のお子さん、
つまり親子入学が実現をしております。
同時に、もうすでに数例生じておりますが、
卒業生のご兄弟も今回入学を果たされております。
卒業生や卒業後就職した企業からの評価を
最も大切にする専門学校において、
こうした入学が実現できることは最も嬉しい出来事であります。

さて、新入生の皆さんは今、環境問題に取り組みたい、
ものづくりに貢献したい、医薬品を開発したい、
食の安全を守りたいなど、それぞれの動機によって、
そのことを仕事にするために入学をされてきたと思いますが、
志は違っていてもここには相通じるものがあります。
それは何でしょうか。

それは、人の豊かな生活を、人の健康を、人の生命を
結局すべては人に直接通じるということ。

皆さんが入学前の体験入学でもこういう話をしてきました。
明治時代に医者という道から化学者になった、
高名な高峰譲吉のお話しです。
高峰譲吉は16歳の時、医者になるため大阪医学校で学び、
医者になるためには化学知識も必要だということで、
今、日本分析化学専門学校がある天満からほど近い、
舎密局と呼ばれた日本初の化学の学校で化学を学びました。
そうするうちに、「医者は一人一人の患者を救うが、
化学は一度にたくさんの人を救う」と考え、
医者から化学者へと志を変えたのであります。
そして100年以上経った今も、
当時奇跡の薬と言われた止血剤に使われるアドレナリンの発見。
胃腸薬、消化剤として使われるタカジアスターゼの発見。
今も私たちの生命は、
100年以上前の化学者の発見によって支えられているといっても
過言ではありません。
高峰譲吉は「たくさんの人を救うのだ」という志を持って仕事を選び、
そしてそれを実現されたのであります。

前置きが長くなりましたが、日本は今、
東日本大震災以降大変困難な状況に陥っています。
しかし、日本人は数々の困難から、
私たちの祖先が志を持って立ち上がりながら、
世界に類のない2000年以上続く国になっているのであります。

近いところで言えば、1945年の第二次世界大戦終戦後の
焼け野原の中から、20年後にはオリンピックを開催し、
25年後にはアジア初の国際博覧会である万国博覧会を大阪で実施し、
50年後には世界一の経済大国になりました。
これは世界から見れば驚異的な復興であり、
そこには勤勉な私たち祖先の努力と同時に、
科学技術の発展があったからこそに他なりません。

日本分析化学専門学校に入学した皆さんは、
今、まさに大なり小なりの志を持って化学者への一歩を踏み出しました。
皆さんが身につける化学の知識、技術は、
皆さん自身が生きていく道であると同時に、
さきほど申し上げました通り、「たくさんの人、たくさんの国、
そしてかけがえのない地球を救う技術」にもつながります。
ここで学び、ここで学んだことを活かし、
100年後の人類を救っているかもしれません。

今、日本にとって化学者が本当に必要なこの時この年に、
化学者を志し皆さんが本校に入学されたこと。
それは偶然ではなく、必然という使命を帯びて
入学されたのだと私は考えていますし、
ぜひこうした使命感に燃えながら、
勉学に励まれることを切に願っています。

幸い皆さんはその環境があります。
皆さんを支えるご両親、友人、
そして我々日本分析化学専門学校の教職員がいます。
前向きに取り組む皆さんを精一杯サポートします。
そして、同世代だけではなく、
出身地も経歴も年齢もさまざまな人たちがここに集ったという、
1億2千7百万分の170という奇跡の出会いを大切に、
2年制学科の入学生は2年後、4年制学科の入学生は4年後、
自分が日本を復興し、世界を支えるのだという大きな気構えを持って、
ぜひ勉学に励んでいただくことをお願いしたいと思います。

最後になりましたが、今ここで、本校に入学したことが、
皆さんにとって間違いのない選択であったと卒業時に証明すること宣言し、
私の挨拶といたします。
ともに頑張りましょう!」

こんな感じのメッセージでした。

また、ご来賓のお一人である、卒業生の就職先企業ご代表の挨拶の一節。
「当社に入社した時は国公立大学卒業生の方が勝る部分が大きい。
しかし、入社して10年経って管理者になるのは、
日本分析化学専門学校の卒業生。
これは、学校の教育の仕組みにあると私は考えている」と。
私たち教員の合い言葉、
「在校時に好かれる教員でなく、
嫌われてもいいから本当に必要なことを教え、
卒業してから思い出される教員であろう」を具現化した、
勇気ある言葉をいただきました。

新入生の宣誓では、
東日本大震災後、思うところあって
食の安全を守ることを仕事にと決意した新入生が、
将来その仕事に就くために勉学に励むことを誓いました。
その宣誓に対し私は、「その誓い、忘れないし応援する」と握手で答えました。

入学式は単にセレモニーでなく、
学校の方針を、新入生のみならず、保護者、ご来賓、
もっと言えば教職員にも伝えるところだと思っています。
いわば、私たち学校側と学生達が共通の認識を持ち、
ちょっと大げさですが、教える方も教わる方も、
いい意味で覚悟の場だと。

このことを忘れないためにも、今日はここに書いてみました。
読者の皆さん、また、新入生も教職員にも時折読み返して欲しいし、
ここを出発点として、平成24年度の船出としましょうぞ!

by 校長かりめろ