実験の醍醐味

重量分析テキスト

 化学分析コース1年生の今日の実験は重量分析でした。金属イオンが溶け込んでいる水に、その金属と反応して沈殿をつくる薬品を加え、できた沈澱の重量から、溶け込んでいた金属イオンの量を調べようという実験です。この文章だけだと簡単そうな実験ですが、薬品の加え方、pHの調整、温度条件など、慎重に行なわなければならない操作も多く、まさに、分析化学の基本中の基本といえる実験です。1年生も、皆、真剣に取り組んでいました。
 その実験の最中、学生の一人が、ガラス器具をテーブルにぶつけて、ヒビを入れてしまいました。そのまま捨てようとする学生に、M先生が「ちょっと待って」と声を掛け、おもむろにガスバーナに火をつけて、ヒビの入った部分を加熱しだしました。小さなヒビであれば、ガスバーナーの炎で細工することで修理できるのです。
 分析化学の現場では良く行なわれていることですが、学生にとっては初めての経験です。皆、真剣なまなざしで、M先生の手元を見つめていました。すると、見る見るうちにヒビはふさがれ、修理は完了しました。学生からは驚きの声が上がり、一斉に、「もう一度、見せてください」とのアンコルが起こりました。
 実験で学ぶことは、実験のメインテーマだけに関係するとは限りません。メインテーマ以外にも身につくことがたくさんあります。そして、今回のように、先生の技を目の前で見て、それを覚えるというのが非常に重要であり、まさに実験の醍醐味と言えるでしょう。
 今日の化学分析コースの1年生は、まさに、この実験の醍醐味を味わったのではないでしょうか。
by水の都